教員免許更新講習(必修)を受けて考えたりしたことをまとめてみました。
気づいたら結構な長文になりました。
文字ばっかりですみません。
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免許更新講習の必修2日間(計8講座)は
現代の教育に関する分析と、組織論や法令関係の講座という構成。
中でも興味深くお話をうかがったのは、1日目に行われた
(1)比較教育学の渋谷英章先生
(2)脳科学を専門とする特別支援の濵田豊彦先生
の講座。
その内容を復習とメモがてらに自分の考えも織り交ぜながらまとめてみる。
■教育に関する二つの国際比較
・日本青少年研究所による国際比較調査
・OECD生徒の学習到達度調査
から見えてくる事
世間で言われていることはおおむねこのような感じだととらえている。
(この場合の「世間」はマスメディアが報じる「世論」のようなものとして)
(1)PISA調査で日本は順位を下げ、学力が低下したようだ。
(2)これは学習指導要領が改訂された「ゆとり教育」の結果である。
(3)新しい学習指導要領では指導内容を増やし(元に戻し)
(4)なおかつ国際競争力をつけるような教育をしていくのだ。
(5)そうしなければ日本はグローバル社会で遅れを取ってしまうのだ!
「みんながそういっているから」という事をつなぎ合わせて
伝言ゲームになった結果、だいたい残ったのが
このような「オピニオン」ではないだろうか。
まず(1)PISA調査の結果から見ていくと、
これは2003年、2006年、2009年、と3年ごとに行われており、
読解力は14位→15位→8位
数学的リテラシーは6位→10位→9位
科学的リテラシーは2位→6位→5位
となっている。
順位だけを見るならおっしゃる通りで、
03年から06年にかけて全てにおいて順位を下げた。
そもそもこのPISA調査は3分野をどのような観点で調査しているのか。
どうも学校で実施されるような定期考査のように、
学んだ内容(知識の量)を確認するようなテストを想像してしまいがちだが、
そうではないらしい。
これを実施しているOECDは本部をフランスのパリに置き、前身は欧州経済協力機構という。
そこにアメリカとカナダが参加してOECDになり、後になって日本や他の国も加盟したが、
EUという小さなグローバル社会が考え方のベースにあると言える。
経済産業省の解説によれば、OECDは経済発展、貿易自由化、発展途上を目指しているそうだ。
PISA調査での読解力とは
「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、
効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、
利用し、熟考し、これに取り組む能力」のことである。
数学的リテラシーや科学的リテラシーも同様で、「社会生活」や「市民」というキーワードが出てくる。
総合的に見て、この調査は「EU(もしくは同様のグローバル社会)というコミュニティの市民としての力」
という考えを学習到達度の根本に置いている。
日本の教育システムは、市民としての力云々ではなく狭い範囲での受験学力を
評価の基準に置いているため、PISAが言うところの学習到達度とは考え方を異にする。
「日本青少年研究所による国際比較調査」高校生の勉強に関する調査では
「教科書中心的な授業のほかには、大半の項目(※)で肯定率が低い」
(※)生徒によく発言させる授業や、グループで課題を考える授業など
「教科書中心的な授業が好きという者が4カ国中最も多い」
という結果になっている事からも、日本の教育実践がEUのそれと異なっている事がわかる。
このような視点から見ると、そもそもの学力観が異なっているのだから
(2)ゆとり教育の結果、学力が低下したとも言い切れない。
また、調査は参加国が年々増えており、増えた国を除いて順位や成績を比較すると
そうそう低下しているとも言い切れないというような主張をする研究もある。
次に(3)新しい学習指導要領では指導内容を増やす事については
諸外国の傾向は現在、授業時間や学習量を削減する傾向も出てきている。
シンガポールは学習量を減らしながらPISA調査の順位はキープしている国の1つである。
減らした分はプロジェクトや子どもが参加するもの(行事などか)を増やしたとされる。
(4)なおかつ国際競争力をつけるような教育をしていくのだ。
(5)そうしなければ日本はグローバル社会で遅れを取ってしまう
このあたりは内田樹の影響が強くあって個人的にまとめた部分であるが、
国家というものが経済活動によって解体されつつある現在、
どのようなものを「不易」と判断して大切にしていくかが問われている。
最後に、我が意を得たり、と思ったのは
国立教育政策研究所が行ったPISA調査結果の分析にあった
「「学校の活動」を行っている学校に通う生徒の方が読解力が高い」という記述。
受験で必要な、いわゆる「主要5教科」を効率的にやらせるだけでよいのか。
「授業時数確保」や「行事の精選」という言葉が現場でよく聞かれる。
まるで錦の御旗のように使われている言葉であるが、
本当に大切な事(時間)は、丁寧に工夫して、その時間を確保したり
実践した事を発信するなどして理解を広げていかなければならないと考えさせられた講座であった。
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